井戸の解体は、「埋め戻し」という作業をして適切に対処する必要があります。埋め戻しとは、土砂・ガスの排出や土管の撤去をしたうえで、井戸を解体・撤去する専門的な工事です。地盤の安定性確保や土地の安全性向上を目的としておこなわれます。
できるだけ費用をかけたくないことから「自分で埋め戻しをしたい」と考える方もいますが、工事には専門的な技術や経験が求められます。経験がない状態で作業をすると、取り返しのつかない失敗をするおそれがあるので、専門業者に依頼するのがおすすめです。
本記事では、井戸の埋め戻しの概要や工事の流れ、業者に依頼する際のポイントなどについて解説します。
井戸の「埋め戻し」とは?
井戸撤去する場合の「埋め戻し」とは、土砂・ガスの排出や土管の撤去をしたうえで、井戸を解体・撤去する工事です。
井戸は埋めるだけでは適切な対処と言えず、埋め戻しをおこなって地盤を安定させ、土地の安全性を確保することが求められます。
とくに、新しい家を建て替える際や、建物を取り壊して土地を売る場合は、埋め戻しによって土地を安全な状態にすることが重要です。実施していなければ、地盤が弱くなって新しい家に悪影響を与えたり、土地の売却後に買主とのトラブルが発生したりするおそれがあります。
また、長期間使われていない井戸は、土砂やガスが溜まっているケースがあります。土砂やガスが溜まっている状態のまま放置すると、井戸の崩壊や水質汚染を引き起こすおそれもあるので工事がとても重要です。
お祓いは義務付けられてはいない
埋め戻しの一連の作業には、「お祓い」の意味も込められています。
水道設備が整っていなかった時代は、井戸の水は飲み水や生活用水として使われていました。命の源である水が得られる井戸は、古くから「神聖な場所」「水の神様が宿る」と考えられていたのです。
そのため井戸を無下に扱うことはよくないと信じられ、お祓いで清めてから処分することが推奨されています。
しかし、とくに法律で義務付けられているわけではないため必須ではありません。信仰心や気持ちの部分が大きいので不要と判断し、お祓いを省いて埋め戻しを進める施主も多いです。
ただ、実際の工事が始まってから「やっぱりやっておいた方がよかったかも…」と考えても取り返しがつきません。
井戸に愛着があり、心から感謝を伝えたいと考える場合は、気持ちを整理するために実施するのがおすすめです。
井戸の埋め戻しの流れ
井戸の埋め戻しをおこなう際は、事前に手順を把握しておくとスムーズに進められます。以下は一般的な流れです。
- お祓いをおこなう(任意)
- 清掃して息抜きをおこなう
- 砕石や砂で徐々に埋める
- 地盤を固める
手順ごとに解説していきます。
1.お祓いをおこなう(任意)
工事の前にお祓いをおこないます。
形式やお供え物は、それぞれの寺社によって異なります。事前に流れを確認し、参加者に共有しておきましょう。
また、お祓いの際は「初穂料」と呼ばれる寺社への謝礼金を渡します。初穂料は、のし袋に入れて渡すのがマナーです。初穂料の金額は明確に定められてはいませんが、20,000〜50,000円が相場となっています。
ただ、先ほども触れましたが、お祓いは義務付けられているわけではないため必須ではありません。感謝を伝えたい場合や、気持ちの整理がしたい場合は実施すると良いでしょう。
2.清掃して息抜きをおこなう
井戸に残っている水やゴミを取り除き、内部を清掃します。長年使われていない場合、ゴミや汚泥が溜まっている事が多いため、綺麗に清掃しましょう。
井戸を清掃後、息抜きをおこないます。息抜きとは、井戸の底から塩化ビニール製パイプもしくは筒抜きした竹を通し、空気の通り道をつくることです。
息抜きをすることで地下に溜まったガスが排出され、地盤の安定性確保につながります。ガスをそのままにしてしまうと、地盤沈下のリスクが高まるので必ず実施してください。
また、息抜きをした場合、パイプや竹を通しておく期間はとくに決まっていません。そのため井戸の解体をしてから1か月後や半年後など、好みのタイミングで自由にパイプや竹を抜いても問題ないです。
3.砕石や砂で徐々に埋める
息抜きが完了したら、砕石や再生砂を使って井戸を埋めていきます。注意点としては、良質な砕石や砂を用いなければ、地下水の水質悪化や地盤の劣化の原因となってしまうおそれがあります。
そのため、自分で埋め戻すようなことは避けて、専門業者に依頼するのがおすすめです。
4.地盤を固める
井戸を埋め戻し、地面の高さまで到達したら井戸の枠を取り外して、地盤を固めつつ整地をおこないます。
この時、息抜きの工程で刺したパイプはそのままにします。これは「ここに井戸があった」という目印にしておくためです。新しく建物を建てる際にはパイプを取り除きます。
井戸の埋め戻しは自分でもできる?
できるだけ費用をかけたくないことから、「自分で埋め戻しをしたい」と考える方もいらっしゃると思います。
自分でおこなうことも不可能ではありませんが、自分で実施せずに専門業者に依頼しましょう。
工事には専門的な技術や経験が求められます。経験がない状態で作業をすると、取り返しのつかない失敗をしたり、大きなケガにつながったりするリスクが高いです。
また、自分で砕石や砂を準備して工事をしても、適切に進められなければ準備したものが無駄になってしまうおそれもあります。「自分でやってみたはいいもののうまくいかず、最終的に業者に相談した」といったケースも少なくありません。
失敗して無駄なコストをかけないためにも、専門業者に依頼しましょう。
業者に依頼した際の費用相場
業者に依頼した際の費用相場は、10万〜20万円が相場です。費用には、清掃や息抜きなどの作業も含まれています。
ただし、井戸の規模が大きい場合や、特別な清掃が必要な場合は、さらに費用が高くなるケースもあります。また、家の解体と一緒に井戸の埋め戻しもおこなう場合は、埋め戻しのみの場合と比べて安く済む可能性があります。
事前に専門業者から見積もりを取り、正確な料金を確認しましょう。
井戸の埋め戻しを業者に依頼する際のポイント
井戸の埋め戻しは専門業者に依頼する必要があるため、信頼できる業者の選定をおこなわなければいけません。以下のポイントを押さえて、業者を選びましょう。
- ・複数の業者から見積もりをとる
- ・料金を明瞭に説明してくれる業者を選ぶ
- ・工事実績が豊富な業者を選ぶ
複数の業者から見積もりをとる
専門業者に見積もりを依頼する際は、最初からひとつの業者に絞るのではなく、複数の業者から見積もりをとって選定をおこないましょう。
複数の見積もりをとることで、料金や含まれているサービス内容が比較できます。また、料金の内訳の説明や対応の仕方、知識・経験の豊富さなど、業者の雰囲気を確認することにもつながります。
料金を明瞭に説明してくれる業者を選ぶ
見積もりの内訳が明瞭かどうかも重要なポイントです。
見積もりは合計金額が記載されていればいいわけではなく、「何にいくらかかるのか」が重要です。
「埋め戻し作業一式」といった大まかな見積もりでは、見積もりに含まれていると思っていた内容が含まれておらず、聞いていた金額よりも高い料金を請求される可能性があります。
そのため、詳細を記載していない見積もりを出すような業者に依頼するのは避けましょう。
工事実績が豊富な業者を選ぶ
工事実績が豊富な業者は、その分知識や技術が豊富にあり、蓄積されたノウハウを活かして工事をおこなってもらえます。
工事実績は業者のホームページに掲載されていることが多いです。
また、実際に工事を依頼した「お客様の声」もあわせて確認するのもおすすめです。実際に工事を依頼した人の生の声を確認できるので、その業者が信頼できるかどうかの指標になります。
まとめ
井戸の埋め戻しの流れをおさらいしましょう。
- お祓いをおこなう(任意)
- 清掃して息抜きをおこなう
- 砕石や砂で徐々に埋める
- 地盤を固める
できるだけ費用をかけたくないことから「自分で埋め戻しをしたい」と考える方もいますが、工事は専門業者に依頼しましょう。
専門業者に依頼すれば、井戸の解体計画の立案や必要な事前作業、確実な工事まで一貫して対応してくれます。知識や経験が豊富なので、失敗のリスクもほとんどありません。
安心安全かつ確実な工事をするためにも、知識・技術が豊富な専門業者に依頼しましょう。