解体工事は建物や構造物を撤去するために、特殊な工具を使って取り壊したり、重機を使って取り壊したりします。

土地の再開発や家屋の建て替えなどに必要な工事ではありますが、思わぬ事故が起きてしまうことも少なくありません。工事関連のなかでも、解体工事はとくに事故を起こしやすいと言われています。

このような事故・トラブルが発生した時に補償してくれるのが「損害賠償保険」です。隣家に損害を与えてしまったり、第三者に被害を与えてしまったりした場合は保険の対象になるため、万一の際のリスクに備えておくことが重要です。

本記事では、解体工事における損害賠償保険の基本情報や必要性、さらにトラブルを防ぐためのポイントなどについて解説します。

解体工事は事故が多い？だからこそ必要な損害賠償保険

解体工事は、建物や構造物の撤去という大型作業を含むため、多くのリスクを伴います。万が一のトラブルに備えて必ず保険に加入することをおすすめします。なかでも重要なのが「損害賠償保険」です。

建設業においては、「建設工事保険」といった保険があります。これは、工事中に予期せぬ事故で建物や資材などに損害が生じた場合に損害を補償する保険です。

解体工事も建設業の1つですが、解体作業は建設工事とは性質が異なるため、この建設工事保険の対象外となるケースが多く見られます。なぜなら、新たに建物を建設するわけではなく、既存の建物を安全に取り壊す工事であるためです。また、事故のリスクが特に高い分野と見なされているため、保険会社としても多額の保険金を支払うことは避けたく、対象外となっているケースが多いのです。

とはいえ、何も備えをしないというのは不安になりますよね。そこで加入が推奨されるのが「損害賠償保険」です。隣接した建物の破損や通行人に怪我を負わせてしまった場合などに、補償を受けることが可能となります。

解体工事に保険が必要な理由

前述のとおり、解体作業は他の工事に比べて事故のリスクが非常に高いとされています。ここからは解体工事で保険が必要とされる主な理由をいくつかご紹介します。

近隣住宅や建物を損傷してしまう可能性があるため

解体作業中に発生した破片が隣の建物に飛び散ったり、重機の操作ミスで隣家に損害を与えてしまうケースはかなり多いです。

また、直接の接触だけでなく、工事中の振動によって隣家の塀や壁にヒビが入ってしまうケースも見受けられます。

いくら警戒して工事を進めていても、解体工事には予期せぬトラブルがつきものです。だからこそ、常にリスクを意識した対応が求められます。

第三者に被害（ケガ）を与えてしまうおそれがあるため

解体した際の破片が通行人にあたったり、重機や車両が一般車・通行人と衝突してしまったりなどで、第三者に被害（ケガ）を与えてしまうおそれがあります。

大きな事故は適切な安全対策をとることで予防しなければいけませんが、万が一第三者に被害を与えてしまった場合は、迅速な保険対応が求められます。

作業員が足場から落下するなどの事故が起こるおそれがあるため

解体工事は高さが2メートル以上の場所で作業をする場合、足場などの作業床を設置することが義務付けられています。しかし、足場が原因となって起きてしまう事故も少なくありません。

たとえば、足場の不適切な設置によって作業者が転落する事故が起きたり、強風や悪天候などによって足場が倒壊したりなど、危険な事故が発生しています。

足場は作業者だけでなく、倒壊によって第三者に被害を加えてしまうおそれもあります。

重機やトラックの操作ミスによる事故を防ぎきれないため

解体工事では、建物を解体する重機や、重量物を運搬するクレーン車、廃棄物の運搬をおこなうトラックなど、さまざまな重機や車両を使用します。

解体工事を進めるうえで必要なものばかりですが、重機の操作ミスによる損傷事故や、クレーン車の横転事故、トラックと一般車・通行人の衝突事故など、危険な事故が多く発生しています。

車体が大きく、重量もある重機や車両は、事故を起こすと甚大な被害を及ぼします。隣家の損傷、第三者のケガだけでなく、死亡事故もおこしてしまうおそれがあることを理解しておきましょう。

解体業者が加入する損害賠償保険の種類

解体作業を専門の施工会社に依頼する際には、その会社が適切な保険に加入しているかを確認することが大切です。ただし損害賠償保険にはいくつか種類があるため、施主として基本的な保険の種類や内容を把握しておくことが望まれます。

工事単位の保険

工事単位の保険は、実施する工事ごとに随時加入をおこないます。

保険の対象は申し込んだ特定の工事に限られるため、異なる工事を実施する際は再度加入が必要となります。保険料は一律で決まった金額があるわけではなく、工事の請負金額によって決定される仕組みです。

そのため、万が一の賠償リスクが大きい現場だけに加入する、といったような使い方ができます。

とくに、大型ビルの解体工事や、多くの重機を長期間使用するような現場などで利用するケースが多く見られます。

年単位の保険

年単位で契約するタイプの保険は、業者が1年間に担当するすべての解体工事が補償の対象となる仕組みです。

保険料は会社の年間の売上に応じて決定されるため、年間の売上が高ければ保険料は高く、売上が低ければ安くなります。そのため、さまざまな売上規模の業者が入りやすい保険です。

年間を通じて万一の事故の補償をしてくれるので、加入し忘れを防げます。依頼側としても、万が一の時の補償が常に受けられるという安心感があります。

車両単位の保険

車両単位の保険は、使用する車両・重機に対して年間で加入をおこないます。

先ほど紹介した「工事単位」「年単位」と併用して加入されることが多く、重機の急なアクシデントや操作ミスで生じた事故の補償が受けられます。

解体工事でトラブルを避けるための3つの重要ポイント

保険が補償してくれるとはいえ、事故を事故を起こさないためにも最大限対策をおこなうことは大切です。ここからはトラブルを防ぐための3つのポイントを紹介します。

業者が損害賠償保険に加入しているかを必ず確認する

解体工事を担当する業者は、必ず損害賠償保険に加入していることが望ましいですが、業者が加入しているかは、施主側でも事前に必ず確認するようにしましょう。

対応がずさんな業者は加入せずに工事を進めようとするケースもあります。その場合、万一事故を起こした際に、保険に未加入の業者はすべての責任を負いきれなかったり、賠償金が支払きれなかったりする可能性があります。

その結果、施主側が損害を受けることになるかもしれません。自分自身を守る意味でも、事前にしっかり確認するようにしてください。

また、どのような保険に加入しているか、証券のコピーをもらって確認するようにしましょう。これにより、賠償金額の支払い限度額や補償内容なども詳しくチェックすることが可能です。

近隣住民への配慮を心がける

ご近所トラブルを防ぐためにも、解体工事を始める前には近隣住民への挨拶・説明も大切です。

解体工事では、騒音や粉塵を発生させてしまい、迷惑をかけてしまう可能性が高いです。また、もし事故を起こした場合、事前に挨拶・説明しておくことで被害者の対応が変わることもあります。

迷惑をかけないように最大限配慮をして進めることが重要ですが、誠意ある対応をおこなって理解を深めておくようにしましょう。過去には施主からの挨拶がなかったため、近隣住民からのクレームが殺到し、訴訟問題にまで発展したような事例もあります。挨拶・説明の方法がわからない場合には、業者に相談するようにしましょう。

また、意外と作業員のマナーや対応も見られています。悪い印象を与えてしまわないよう、誠意ある行動を心がけましょう。

安全に作業ができる工事スケジュールを組む

解体工事は事故のリスクが高く、とくに慎重に実施する必要がある工事です。そのため、業者と綿密な打ち合わせをして、安全に作業ができる工事スケジュールを組むようにしてください。

工期の短縮や、悪天候時の工事を指示するなど、無理な要望はやめましょう。施主の無理な要望が原因で事故を起こしたと認められた場合、施主にも損害賠償責任が生じることがあります。

無理のない範囲で工事を進めてもらうように依頼しましょう。

まとめ

解体工事は、事故が起こりやすいため、損害賠償保険の加入は必須です。事故やトラブルを起こした場合は保険の対象になるため、万一の際のリスクに備えておくようにしてください。

業者を選ぶ際には、保険の加入状況や補償の範囲をしっかり確認し、依頼するようにしましょう。損害賠償保険は、解体業者だけでなく施主も守るための制度です。必ず加入してから工事を開始するようにしてください。