解体工事用重機の種類と特徴|重機の選び方から安全対策まで解説

解体工事を行う際には、現場の立地や建物の構造に応じて、最も適した重機を選ぶことが重要です。これにより作業効率が向上し、同時に安全性の確保にもつながります。また、重機の運用だけでなく、作業員や周辺住民の安全対策にも十分な注意を払う必要があります。安全を最優先にしながら工事を円滑に進めるためには、機械選定の段階から現場環境に対する配慮が求められます。

今回は、解体に用いられる各種重機の特徴と用途について解説するとともに、安全かつ効率的に工事を進めるための適切な重機選びのポイントについてご紹介します。

解体作業に用いられる主な重機とその特徴

建物の解体工事では、用途や作業環境に応じてさまざまな建設機械が使用されます。代表的な機種は以下の通りです。

  • ・油圧ショベル
  • ・ロングアーム
  • ・ツーピースアーム
  • ・マルチブーム

油圧ショベルの特徴と活用シーン

建物の解体作業においては、現場の状況や建築物の構造に応じた重機の選定が、安全性の確保と作業の効率化に直結します。その中でも油圧ショベルは、多目的に使用できる機械として、住宅からビルまでさまざまな現場で広く導入されています。

解体作業全般はもちろん、基礎部分の撤去や瓦礫の集積といった処理にも対応でき、まさに解体現場の中心的存在です。また、狭い敷地や出入口が限られたエリアでは、幅1メートル程度の小型モデルが重宝されており、作業空間に応じて機体サイズを柔軟に選べる点も大きな魅力です。

ロングアームの特徴と活用シーン

ロングアームとは、一般的な油圧ショベルと比べて作業アームが長く設計されたタイプの重機で、「ロングブーム」や「ロングリーチ」とも呼ばれることがあります。その長さを活かして、アームを高く伸ばすことができ、約10メートル以上の高さにある構造物にも対応可能です。

主に中層から高層の集合住宅や商業ビルの解体現場で活躍しており、建物から十分な作業距離を取ることで、安全性を維持しつつスムーズに作業を行うことができます。高所作業をより安全に、かつ効率的に進めるための重機として重要な役割を担っています。

ツーピースアームの特徴と活用シーン

ロングアームでは対応が難しいような、入り組んだ構造や制限の多い現場で力を発揮するのがツーピースアーム式の重機です。

このタイプは、アームの関節部分が複数に分かれており、より細かな動作や角度の調整が可能です。そのため、高さのある建物の上部にも届くだけでなく、狭小スペースや障害物の多い場所でも、自在なアーム操作によって効率的な作業が実現できます。

従来の重機では困難だった作業環境でも対応できるため、都市部や密集地の解体現場で特に重宝されます。

マルチブームの特徴と活用シーン

ツーピースアームでは対応しきれない高さの建物に対し、解体現場で使用されるのがマルチブームタイプの重機です。この機械は、アーム部分の付け替えや長さの調整が可能で、作業内容や現場の条件に応じた柔軟な運用ができます。

非常にパワフルなアタッチメントを装着することで、太い鋼材を巨大なカッターで切断したり、重厚なコンクリートを強力なクラッシャーで破砕したりするなど、大規模な構造物の分解に対応可能です。

アームをフルに伸ばした際には、40〜50メートルの高さに届き、10階から17階建て程度の超高層建築物の解体も効率よく進めることができます。

重機のサイズ別価格の参考

「解体作業用の重機は、サイズや価格帯によってどのくらい違いがあるのか?」と気になる方も多いのではないでしょうか。実際の価格は、新品か中古かの選択に加え、取り扱うメーカーや販売店によっても差があります。そのため、以下の情報はあくまでおおよその目安としてご参考ください。

このあとでは、重機のサイズごとにおける大まかな購入コストの目安について詳しくご紹介します。

ミニサイズ

ミニサイズは、解体用建設機械の中でも最もコンパクトなタイプに分類されます。たとえば、工事対象の建物前の道路が狭かったり、搬入路が限られていて大型機械の通行が難しい現場では、このサイズの重機が非常に有効です。

コンパクトな設計ながらも、狭小スペースでの作業に対応できるため、小規模な解体現場などで重宝されます。

全幅約1m
全長約4m
購入費用(新品)約550万円
購入費用(中古)約250万円

0.1㎥クラス(通称:コンマイチ)

ミニサイズより一回り大きい機種として知られているのが0.1㎥クラス、通称「コンマイチ」です。解体作業の現場においては、ミニサイズと同様に、大型機が入りづらい狭い空間での作業に適しています。

狭小地での作業性と、ミニサイズよりも若干余裕のあるパワーを兼ね備えた機種として、多くの中小規模解体現場で活用されています。

全幅約1.7m
全長約4.5m
購入費用(新品)約550万円
購入費用(中古)約250万円

0.15㎥クラス(通称:コンマイチゴー)

0.15㎥サイズの重機は「コンマイチゴー」とも呼ばれ、やや小ぶりな油圧ショベルとして現場での取り回しの良さが魅力です。一般的なモデルよりもコンパクトなため、狭い現場でも作業しやすく、利便性の高いタイプとして人気があります。また、小型で軽量なことから、4トン車の荷台に積載して移動できるケースも多く、運搬面でもメリットがあります。

コンパクトさと操作性を両立したこの機種は、都市部の解体や中小規模の現場において、効率的な作業を支える存在です。

全幅約1.5m
全長約4.7m
購入費用(新品)約550万円
購入費用(中古)約250万円

0.2㎥クラス(通称:コンマニ)

0.2㎥サイズの重機は「コンマニ」と呼ばれ、小回りの利く設計と十分なパワーを兼ね備えたモデルです。特に木造住宅の解体に適しており、中規模の現場で安定した作業効率を発揮します。

取り回しやすさと出力のバランスが取れているため、住宅街などの狭い敷地内でも無理なく作業ができるのが特長です。

住宅密集地での使用にも適しており、柔軟性と実用性を兼ね備えた定番モデルの一つです。

全幅約2m
全長約5.2m
購入費用(新品)約750万円
購入費用(中古)約500万円

0.25㎥クラス(通称:コンマニーゴー)

解体現場で最もよく使われているのが0.25㎥クラスの建設機械で、汎用性が高く、標準的なサイズとして広く普及しています。業界では「コンマニーゴー」と呼ばれ、幅はひとつ下の0.2㎥モデル(コンマニ)と大きな差はありませんが、全長がやや長く設計されているのが特長です。

中規模から大規模な解体作業まで対応可能で、多くの現場で中心的な役割を果たしています。

全幅約2.2m
全長約6m
購入費用(新品)約800万円
購入費用(中古)約550万円

0.45㎥クラス(通称:コンマヨンゴー)

0.45㎥サイズの重機は、「コンマヨンゴー」と呼ばれるやや大型の油圧ショベルです。一般的な戸建て住宅の解体にはあまり用いられず、より規模の大きな構造物に対応するための機種です。

主な活躍の場は、アパートや工場などの大規模施設。特に鉄骨造や鉄筋コンクリート造といった強度の高い建物を解体する際に、そのパワーとサイズが真価を発揮します。

高強度な建築物の解体を効率よく進めるために設計された、大型現場向けの頼れる機種です。

全幅約2.5m
全長約7.3m
購入費用(新品)約1,100万円
購入費用(中古)約700万円

0.7㎥クラス(通称:コンマナナ)

0.7㎥クラスの油圧ショベルは、「コンマナナ」と呼ばれ、解体作業用としては最上級クラスのサイズを誇る重機です。高層建築物のような大規模な構造物にも対応できるパワーとリーチを備えており、一般的な戸建て住宅ではなく、より大きな建物の解体に特化しています。

このクラスの機体は、工場、集合住宅、商業ビルなどの堅牢で高層な建物を効率よく解体するために用いられ、コンマヨンゴーと同様に、広範な現場で活躍する頼もしい存在です。

高所対応力と圧倒的な出力を兼ね備えたこのモデルは、大規模解体工事における主力機械のひとつです。

全幅約2.8m
全長約9.4m
購入費用(新品)約2,000万円
購入費用(中古)約1,000万円

安全性・効率性を高めるための5つのポイント

解体工事は高所作業や重機の使用、建物の倒壊など、多くの危険を伴う作業です。作業員と近隣住民の安全を守り、効率的に工事を進めるためには、下記の5つのポイントが重要になります。

1.現場条件に合った重機を選定する

作業をスムーズに進めて安全を守るためには、現場の状況に合った重機を選ぶことがとても重要です。たとえば、道路が狭い場所では、大きな重機が入れず、小型の機械を使うしかありません。その結果、作業に時間がかかってしまい、工事期間が延びたり、コストが増える可能性もあります。

無駄を減らし、安全に作業を行うためにも、「どんな作業をするのか」「現場の広さやアクセスはどうか」などをよく確認して、最適な重機を選ぶようにしましょう。

2.アタッチメントの使い分けで作業スピードを最適化

重機の力をしっかり発揮させるためには、作業に合ったアタッチメントを使い分けることが大切です。アタッチメントとは、重機の先端に取り付ける「はさみ」「クラッシャー」「バケット」などの部品で、目的によって付け替えることができます。

たとえば、「建物を壊すとき」と「がれきを運ぶとき」では、必要なアタッチメントが異なります。工程に応じて適切なものに交換することで、作業スピードが格段にアップし、効率も大きく向上します。

手作業では時間がかかるような工程も、アタッチメントを活用することで、スピーディかつ安全に進めることができるのです。

3.資格保持者による運転と定期点検で事故ゼロを目指す

解体工事で使われる重機を安全に動かすには、専門的な知識と高い技術が必要です。特に、重さ3トン以上の建設機械を操作するには、法律で決められた資格を持っている人でなければなりません(労働安全衛生法による規定)。

経験豊富なオペレーターが重機を扱うことで、安全な作業が確保されます。そして、どんなに良い機械でも使い続ければ故障や不具合が起きる可能性があります。そうしたトラブルが原因で重大な事故につながる危険性もあるため、日ごろのチェックや定期的な点検を欠かさず行うことがとても重要です。

つまり、資格のある人による運転と、きちんとした点検の継続が、安全で事故のない工事につながるのです。

4.近隣住民への配慮でトラブルを回避

解体工事では、どうしても騒音・振動・ほこり(粉じん)などが発生してしまいます。これらが原因で、近隣の住民とトラブルになることも少なくありません。たとえば、大きな音や振動が日常生活に影響を与えれば、苦情が寄せられたり、最悪の場合は工事が一時中断されることもあります。

こうしたトラブルを避けるためには、工事前に近隣の方々へきちんとあいさつをし、工事の内容や期間を説明することがとても大切です。事前に説明し、協力をお願いすることで、住民の方の不安を和らげることができ、理解と信頼を得やすくなります。

ちょっとした気配りが、工事をスムーズに進める大きな助けになります。

5.粉じん・騒音対策

近隣の方への配慮は、あいさつや説明といったコミュニケーションだけでなく、実際の対策もとても重要です。

たとえば、工事中に出るホコリ(粉じん)を防ぐには、現場の周囲を養生シートでしっかり囲うことで飛び散りを抑えることができます。また、工事音がうるさくなりそうな場合には、防音シートや防音パネルを使って、音を外に漏れにくくする工夫も必要です。

さらに、アスベスト(石綿)を含む建物を解体する場合は特に注意が必要です。このようなケースでは、法律に従って、専門的な知識と訓練を受けた作業員が、安全に飛散を防ぐ対策を行うことが義務づけられています。

粉じんや騒音へのしっかりとした対策は、住民との信頼関係を築き、トラブルを未然に防ぐ大切な一歩です。

まとめ

解体作業を安全かつスムーズに進行させるためには、建物の大きさや現場の特性を踏まえて、最適な重機を選ぶことが重要です。さらに、作業の内容ごとに適したアタッチメントを使い分けることが、作業効率の向上につながります。

ただし、重機の選定だけでは十分とは言えません。重機の操作は、資格を持ったオペレーターが担当することが必須であり、現場では安全管理の徹底や、周辺住民への配慮も欠かせません。これらすべてが、事故や近隣トラブルの予防につながります。

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