解体工事に必要な届出とは?手続きの流れから注意点まで解説!

解体工事を検討する際、「どんな届出が必要なのか」「手続きはいつまでに行えばよいのか」「必要な書類は何があるのか」といった疑問を抱かれる方も多いのではないでしょうか。解体工事には法律で定められた各種届出が義務付けられており、適切な手続きを怠ると工事が停止されたり、罰則を受ける可能性があります。

特に床面積80㎡以上の建物を解体する場合は建設リサイクル法に基づく届出が必要で、工事着手の7日前までに提出しなければなりません。また、アスベストが使用されている可能性がある建物では別途専門的な届出も求められます。これらの手続きは複雑で準備に時間がかかるため、早めの準備が肝心です。

本記事では、解体工事に必要な届出の種類から具体的な手続きの流れ、注意点まで詳しく解説します。

参照:建設リサイクル法の概要 | 環境再生・資源循環

解体工事に届出が必要な理由とは

解体工事に届出が必要な理由は、建設廃棄物の適正処理と環境保護、そして工事の安全性確保にあります。日本では年間約7,000万トンもの建設廃棄物が発生しています。これらの廃材を適切にリサイクルし、不法投棄を防ぐために法的な管理が必要となります。

建設リサイクル法は、コンクリートや木材、アスベストなどの特定建設資材を含む建築物の解体において、分別解体と再資源化を義務付ける法律です。届出制度により、工事内容や廃材の処理方法を事前に確認し、適正な工事が行われることを担保しています。

また、アスベストによる健康被害防止や道路交通の安全確保も重要な目的です。届出を通じて行政が工事内容を把握し、必要に応じて指導や検査を行うことで、安全で環境に配慮した解体工事が実現されます。

参照:建設リサイクルを取り巻く近年の 社会情勢の変化とこれまでの取組

届出に必要な書類と記載内容

解体工事の届出には、法律や条例に基づいて様々な書類の準備が必要です。書類の種類や記載内容は届出の種類によって異なりますが、いずれも正確な情報の記載と適切な添付書類が求められます。

ここでは、主要な届出に必要な書類と記載内容について詳しく解説します。

建設リサイクル法に基づく届出

建設リサイクル法の届出には「分別解体等の計画等に関する届出書」の提出が必要です。届出書には、発注者・受注者の氏名や住所、工事の場所・期間、対象建築物の構造・規模、使用する特定建設資材の種類と量を記載します。

添付書類として、建築物の配置図・平面図・立面図、工程表、分別解体等の計画書、再資源化等の計画書が必要です。また、建築物の写真(全景・各面)や建築確認通知書の写しも添付します。工事費が500万円以上の場合は、受注者の建設業許可証の写しも必要です。

記載内容は正確性が重要で、建築物の構造や使用材料について詳細な記載が求められます。特に木材、コンクリート、アスベストの有無については入念な事前調査に基づいて記載しましょう。

アスベスト関連の届出

アスベスト関連の届出は、大気汚染防止法と労働安全衛生法に基づいて行います。大気汚染防止法では「特定粉じん排出等作業実施届出書」を都道府県知事に、作業開始の14日前までに提出が必要です。届出書には作業場所、期間、アスベストの種類と使用箇所、除去方法を記載します。

労働安全衛生法では「石綿作業実施届」を労働基準監督署に、作業開始の14日前までに提出が必要です。作業計画書や石綿濃度測定計画書、作業場所の図面、石綿事前調査結果報告書も添付します。

また、2022年4月1日からは一定規模以上の建築物では事前調査結果の報告も義務化されており、「建築物石綿含有建材調査報告書」を都道府県等に提出する必要があります。これらの手続きには専門的な知識が必要なため、有資格者による適切な調査と書類作成が重要です。

参照:第4講座 建築物石綿含有建材調査報告書の作成

道路使用許可申請

道路使用許可申請には「道路使用許可申請書」を所轄警察署に提出します。申請書には使用目的、使用場所、使用期間、使用時間、使用方法を詳細に記載し、現場の見取図や配置図を添付します。

重機や資材置き場として道路を使用する場合は、使用する道路の幅員、交通量、迂回路の有無なども記載が必要です。また、交通誘導員の配置計画や安全対策についても詳しく説明する必要があります。工事車両の通行ルートや台数、時間帯も明記しましょう。

申請には手数料(一般的には2,000円~3,000円程度)が必要で、許可までに1週間程度かかります。緊急時以外は余裕を持って申請し、許可証は工事期間中現場に掲示することが義務付けられています。道路使用条件に違反すると許可取り消しとなる場合があるため、条件の遵守が重要です。

その他の関連手続き

解体業者が行う主要な手続きとして、産業廃棄物収集運搬業の許可確認や建設業許可の確認があります。これらは届出というより事前の資格確認ですが、適正な業者選定のために重要な要素です。

また、近隣住民への説明は法的義務ではありませんが、トラブル予防のために重要な手続きです。工事内容説明書を作成し、工事期間、作業時間、騒音・振動対策、緊急時の連絡先などを明記して事前に配布することをおすすめします。

自治体によっては独自の条例に基づく届出が必要な場合もあります。景観条例、環境保全条例、建築基準法に基づく除却届などがあるため、工事前に自治体の建築指導課や環境課に確認することが重要です。これらの手続きは業者任せにせず、依頼主も内容を把握し、適切に行われているかを確認しましょう。

届出手続きの流れとスケジュール

解体工事の届出手続きは、工事開始の数週間前から計画的に進める必要があります。各法律で定められた提出期限があり、遅れると工事開始が延期される可能性があるため、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。ここでは、時系列に沿った手続きの流れとポイントを詳しく解説します。

工事前の手続きスケジュール

解体工事の手続きは、工事開始予定日から逆算して計画的に進めましょう。まず工事開始の3週間前までに、アスベスト事前調査を実施し、アスベストが検出された場合は大気汚染防止法と労働安全衛生法に基づく届出を14日前までに提出します。

建設リサイクル法の届出は工事着手の7日前までが期限ですが、書類準備に時間がかかるため、2週間前には準備を開始することをおすすめします。道路使用許可申請も同様に、許可取得に1週間程度かかるため、2週間前には申請を完了させましょう。

近隣住民への説明は法的義務ではありませんが、工事開始の1週間前までには実施し、理解を得ておくのが良いでしょう。これらの手続きは業者が代行することが多いですが、依頼主も進捗状況を確認し、期限内に適切に行われているかをチェックすることが重要です。ライフラインの停止手続きも忘れずに、工事開始の1週間前までに各事業者に連絡してください。

工事中・工事後の手続き

工事期間の延長や解体方法の変更があった場合は、速やかに変更届を提出する必要があります。また、アスベスト除去作業中は、作業状況の記録と濃度測定を継続的に実施し、基準値を超えた場合は即座に作業を停止して対策を講じましょう。

工事完了後は、建設リサイクル法に基づく完了報告書を都道府県知事に提出します。報告書には、分別解体の実施状況、再資源化の実施状況、特定建設資材廃棄物の搬出先などを記載し、写真やマニフェストのコピーを添付します。

さらに、建物滅失登記を法務局で行うことも忘れてはなりません。これは解体工事完了から1ヶ月以内に実施しなければならず、登記申請書、解体証明書、住民票などが必要です。この手続きを怠ると、存在しない建物に固定資産税が課税され続ける可能性があるため、忘れずに実施しましょう。アスベスト除去を行った場合は、除去完了報告書も関係機関に提出することが必要です。

届出を怠った場合のリスクと罰則

解体工事における届出を怠ったり、不適切な手続きを行った場合、法的な罰則が科せられる可能性があります。建設リサイクル法違反では20万円以下の罰金、アスベスト関連法令違反では6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられることがあります。

さらに深刻なのは、工事停止命令や改善命令が出されるリスクです。届出なしで工事を開始した場合、行政から即座に工事停止命令が出され、適切な手続きが完了するまで工事を再開できません。これにより工期の大幅な遅延が発生し、追加費用や近隣への迷惑が生じる可能性があります。

また、届出を怠った工事で事故や健康被害が発生した場合、法的責任がより重くなる傾向があります。特にアスベスト飛散による健康被害では、高額な損害賠償を求められるリスクもあります。適切な届出は法令遵守だけでなく、安全で円滑な工事進行のためにも不可欠です。

まとめ|解体工事の際は余裕を持って適切な届出手続きを行いましょう!

解体工事には建設リサイクル法をはじめ、アスベスト関連法令、道路交通法など複数の法律に基づく届出が必要です。特に床面積80㎡以上の建物では建設リサイクル法の届出が義務付けられ、工事着手の7日前までの提出が求められます。

手続きには専門的な知識と準備期間が必要なため、工事開始の3週間前から計画的に準備を始めることが重要です。届出を怠ると工事停止命令や罰則のリスクがあるだけでなく、工期遅延による追加費用も発生する可能性があります。

信頼できる解体業者を選び、適切な届出手続きを確実に行って、法令遵守の安全な解体工事を実現しましょう。

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