建物や設備を取り除く際、「解体工事」と「撤去作業」という言葉を見聞きすることがあるでしょう。どちらも構造物を取り外す点では共通していますが、実は工事の規模や内容、必要な資格において明確な違いがあります。
それぞれの違いを理解しておかないと、業者への依頼時に認識のズレが生じたり、適切な見積もりが取れなかったりする可能性があります。
この記事では、解体と撤去の定義の違いをはじめ、それぞれの工事内容、必要な許可・資格、費用相場、そして業者選びのポイントまで詳しく解説しますので、工事を検討中の方はぜひ参考にしてください。
解体と撤去の違いをわかりやすく解説
「解体」と「撤去」という言葉は、どちらも建物や構造物を取り除く作業を指しますが、その目的や作業範囲にははっきりとした区別があります。簡単に言えば、解体は「建物全体を壊す工事」、撤去は「建物の一部や設備のみを取り外す工事」と考えるとわかりやすいでしょう。
この違いを理解することで、業者への依頼時に適切な説明ができ、正確な見積もりを取得できます。また、工事の規模によって必要な許可や資格も異なるため、事前に把握しておくことが重要です。
ここでは、解体工事と撤去工事のそれぞれの特徴や注意点について、具体的にご紹介していきます。
解体工事|建物全体を壊す工事
解体工事とは、建物の構造部分を含めてすべてを取り壊し、土地を更地の状態に戻すための工事を指します。木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など、建物の構造に関わらず、建物全体を取り壊して更地にする作業が解体工事に該当します。
解体工事では、重機を使用して建物を破砕し、発生した廃材を適切に分別・処理します。また、建物の基礎部分であるコンクリート基礎や杭の撤去まで行うため、比較的規模の大きな工事になるケースが多いのが特徴です。
建設業法では、床面積500㎡以上の建築物の解体工事を行う場合、建設業許可(解体工事業)が必要と定められています。また、床面積80㎡以上の建築物を解体する際には、建設リサイクル法に基づく届出も必要です。
解体工事の具体例としては、老朽化した住宅の取り壊し、建て替えのための既存建物の解体、空き家の撤去などが挙げられます。工事期間は建物の規模にもよりますが、一般的な木造住宅で1週間~2週間程度を要するのが一般的です。
撤去工事|一部を取り外す工事
撤去工事とは、建物そのものを壊すのではなく、建物の一部や付属設備、外構などを取り外す工事を指します。建物本体は残したまま、不要な部分だけを取り除く作業が撤去工事の特徴です。
撤去の対象はさまざまで、内装リフォーム時の壁材・床材の撤去、内装材の撤去、間仕切り壁の取り外し、ウッドデッキやカーポートの撤去、エアコンや給湯器などの設備撤去、ブロック塀やフェンスの撤去なども含まれます。
一般的に、解体工事に比べて撤去工事は規模が小さく、作業日数も短く済むため、費用も抑えられる傾向にあります。また、建物の構造体に影響を与えないため、建設業許可や建設リサイクル法の届出が不要な場合が多くあります。
ただし、撤去工事であっても、アスベストを含む建材を扱う場合や、大量の産業廃棄物が発生する場合には、専門的な知識と適切な処理が必要です。撤去する内容や規模に応じて、適切な業者を選ぶことが重要となります。
解体工事と撤去工事はどう使い分ける?
解体工事と撤去工事の使い分けは、工事の目的と規模によって判断します。建て替えや土地の売却など、建物をすべて取り壊して更地にする必要がある場合は解体工事が適切です。一方、リフォームや設備の交換、外構の変更など、建物本体は残したまま一部だけを取り除く場合は撤去工事となります。
具体的には、老朽化した住宅の建て替え、空き家の取り壊し、土地活用のための更地化は解体工事に該当します。対して、室内の間仕切り壁の撤去、古いウッドデッキやカーポートの取り外し、不要になった物置やブロック塀の撤去は撤去に該当する工事です。
判断に迷う場合は、建物の構造体(柱、梁、基礎など)に手を加えるかどうかが基準となります。構造体を壊す場合は解体工事、構造体を残したまま一部を取り外す場合は「撤去工事」と考えると良いでしょう。
業者に相談する際も、この区別を理解しておくことで、適切な見積もりを取得できます。
解体・撤去工事に必要な許可や資格について
解体・撤去工事を行う業者には、工事の規模や内容に応じて法律で定められた許可や資格が必要です。適切な許可を持たない業者に依頼すると、違法工事となり依頼主も責任を問われる可能性があるため、事前の確認が重要です。
解体工事を行う業者は、建設業法に基づき「建設業許可(解体工事業)」または「解体工事業登録」のいずれかを取得している必要があります。建設業許可は請負金額500万円以上の工事を行う場合に必要で、それ以下の工事でも解体工事業登録が求められます。
また、床面積80㎡以上の建築物を解体する場合は、建設リサイクル法に基づく届出を工事着手の7日前までに提出しておかなくてはなりません。さらに、産業廃棄物の適切な処理のため、産業廃棄物収集運搬業の許可も確認すべき重要なポイントです。
一方、撤去工事のように建物の構造体を壊さない小規模な作業では、これらの許可が不要な場合もあります。ただし、アスベストを含む建材の撤去など、特殊な工事には専門資格が必要となるため、業者選びの際は工事内容に応じた資格の有無を確認しましょう。
解体・撤去工事の費用相場
解体・撤去工事の費用は、工事の規模や建物の構造、立地条件などによって大きく変動します。一般的な費用相場は以下の通りです。
解体工事の費用相場
| 建物の構造 | 坪単価の目安 | 30坪の場合の総額 |
| 木造 | 3万円~5万円 | 90万円~150万円 |
| 鉄骨造 | 4万円~6万円 | 120万円~180万円 |
| 鉄筋コンクリート造 | 5万円~8万円 | 150万円~240万円 |
解体工事の費用には、解体作業費、廃材処分費、重機回送費、養生費などが含まれます。ただし、アスベスト除去が必要な場合は追加で50万円~200万円程度、地中埋設物の撤去が必要な場合は別途費用が発生します。
撤去工事の費用相場
| 撤去対象 | 費用の目安 |
| ウッドデッキ(6畳程度) | 10万円~20万円 |
| カーポート | 3万円~10万円 |
| ブロック塀(10m) | 5万円~15万円 |
| 物置・プレハブ | 5万円~20万円 |
| 内装撤去(間仕切り壁) | 2万円~10万円/箇所 |
撤去工事は、解体工事に比べて規模が小さいケースが多く、費用も比較的抑えられます。ただし、撤去する対象物のサイズや材質、設置状況によって費用は変動します。
今回紹介したのはあくまでも一例なので、正確な費用を把握するためには、複数の業者から見積もりを取得し、現場の状況を確認してもらいましょう。
解体・撤去業者の選び方は?
解体・撤去業者を選ぶ際は、適切な許可や資格を持っているか、見積もり内容が明確か、そして実績が豊富かを確認することが重要です。信頼できる業者を選ぶことで、トラブルを避け、安全かつ適正価格で工事を進められます。
まず、業者が「建設業許可」または「解体工事業登録」を取得しているか確認しましょう。また、産業廃棄物収集運搬業の許可を持っているか、または提携業者を通じて適切に廃材処理を行っているかも重要なチェックポイントです。
見積もりを取得する際は、複数の業者から相見積もりを取り、費用の内訳が明確に記載されているか確認してください。解体作業費、廃材処分費、重機回送費などが個別に記載されていれば、比較しやすくなります。極端に安い見積もりを提示する業者には、理由を確認し注意が必要です。
また、過去の施工事例や口コミを確認し、類似した工事の実績があるかをチェックしましょう。
まとめ|工事内容を正しく理解して適切な業者を選びましょう
解体工事と撤去工事は、作業の規模や対象範囲によって明確に区別されます。解体工事は、建物を基礎部分まで壊して土地を更地に戻す大掛かりな工事を指します。一方、撤去工事は、建物の一部や付帯設備などを取り外す比較的小規模な作業です。
この違いを理解することで、業者への依頼時に適切なコミュニケーションが取れ、正確な見積もりを取得できます。
工事の規模によって必要な許可や資格も異なります。解体工事には建設業許可や解体工事業登録が必要であり、床面積80㎡以上の場合は建設リサイクル法に基づく届出も求められます。業者選びの際は、これらの許可・資格を必ず確認しましょう。
費用相場も工事内容によって大きく異なるため、複数の業者から相見積もりを取得し、費用の内訳を比較することが重要です。 「解体」と「撤去」の違いを正しく理解し、工事内容に応じた適切な許可を持つ信頼できる業者を選んで、安全でスムーズな工事を実現しましょう。