解体工事を検討していく中で、「近隣への振動はどの程度発生するのか」「周りに住む方々からクレームが来ないか心配」といった不安を抱える方もいるのではないでしょうか。

解体工事では重機による破砕作業や廃材の搬出により、どうしても振動が発生してしまいますが、工事の規模や使用する重機、建物の構造によって強さが異なります。軽微な振動であれば問題ありませんが、強い振動が続くと近隣建物にひび割れが生じたり、住民の生活に支障をきたす可能性もあります。

しかし、適切な対策を講じることで振動の影響を最小限に抑えることが可能です。

本記事では、解体工事で建物が揺れる原因から振動が与える影響、そして効果的な対策方法まで詳しく解説します。これから解体工事を予定されている方や、工事業者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

解体工事で建物が揺れる理由とは？

解体工事で建物が揺れる主な理由は、重機による破砕作業や廃材の搬出作業によって発生する振動が地盤を通じて周辺建物に伝わることです。振動は地盤振動、空気振動、構造振動の3つに分類され、それぞれ異なる経路で建物に影響を与えます。

地盤振動は重機の稼働や廃材の落下による衝撃が地面を通じて伝わるもので、最も影響が大きい振動です。空気振動は作業音による空気の振動で、建物の窓ガラスなどを揺らします。構造振動は建物同士が接している場合に直接伝わる振動です。振動の強さは工事現場からの距離、地盤の硬さ、建物の構造などによって大きく変わります。

重機による解体作業

解体工事で最も強い振動を発生させるのは、油圧ショベルやブレーカーなどの重機による解体作業です。特に鉄筋コンクリート造の建物を圧砕機で破砕する際や、ブレーカーでコンクリートを破壊する作業では、強い衝撃が地盤に伝わります。

重機の重量が大きいほど、また破砕する材料が硬いほど振動は強くなります。基礎の解体作業は特に注意が必要です。地中深くまで振動が伝わるため、周辺建物への影響が最も大きくなります。また、重機の移動や旋回動作でも継続的な振動が発生し、長時間にわたって周辺に影響を与える場合があります。

現代の重機は振動を抑える技術も向上していますが、解体作業の性質上、完全に振動をなくすことは困難です。そのため、作業方法や時間帯の調整による対策が重要になります。

廃材の落下・搬出作業

解体で発生した廃材の落下や搬出作業も大きな振動源となります。コンクリートの塊や鉄骨などの重い廃材が高所から落下する際の衝撃は、瞬間的に強い振動を発生させます。特に多階建ての建物では、上階からの廃材落下による衝撃が顕著です。

廃材をトラックに積み込む作業でも振動が発生します。重い廃材をクレーンで吊り上げてトラックの荷台に載せる際の衝撃や、ダンプトラックが満載の廃材を積んで現場から出る際の振動も周辺に影響します。

また、大型トラックの頻繁な出入りにより、道路を通じた振動が長時間続くことんも気を配らなくてはなりません。

これらの振動を軽減するため、廃材を小分けにして運搬したり、緩衝材を使用したりする対策が取られることがあります。搬出ルートの選定や作業時間の調整も、近隣への配慮として重要な要素です。

解体工事による振動が建物に与える影響

解体工事による振動は、建物の構造や生活環境にさまざまな影響を与える可能性があります。影響の程度は振動の強さや継続時間、建物の築年数や構造によって大きく異なります。

軽微な振動であれば問題ないことが多いですが、強い振動が長期間続くと深刻な被害につながる場合もあるため、注意が必要です。

建物への直接的な影響

解体工事の振動が建物に与える最も深刻な影響は、壁や天井のひび割れです。特に築年数の古い建物や軽量鉄骨造の建物では、継続的な振動により既存のクラックが拡大したり、新たなひび割れが発生する可能性があります。外壁のモルタルやタイルの剥離も起こりやすい被害の一つです。

建具への影響にも注意しなくてはなりません。ドアや窓の建付けが悪くなり、開閉がスムーズにできなくなったり、隙間ができて気密性が低下することがあります。また、振動により建物全体がわずかに歪むことで、内装材の接合部分に隙間が生じる場合もあります。

建物の基礎部分も注意が必要です。地盤の軟弱な地域では基礎に微細なクラックが入る可能性があります。これらの被害は即座に現れない場合もあるため、工事前後の建物状況を記録しておくことが重要です。

生活への間接的な影響

振動に伴う騒音は、日常生活に大きなストレスを与えます。特に在宅勤務や小さなお子様がいる家庭では、集中力の妨げや睡眠不足の原因となることがあるでしょう。振動により家具や食器が揺れる音も不快感を増大させる要因です。

また、精密機器やパソコンは振動に敏感で、故障や動作不良の原因となる場合があります。加えて、冷蔵庫や洗濯機などの家電が振動により正常に動作しなくなることもあります。棚の上の物が落下する危険性もあるため、事前の対策が必要です。

長期間の振動は住民の精神的ストレスを高め、体調不良を引き起こす可能性もあります。特に高齢者や体調の優れない方には深刻な影響を与えることがあるため、工事期間中は十分な配慮が求められます。ペットへの影響も考慮し、適切な対策を取りましょう。

解体工事の振動対策

解体工事による振動被害を防ぐには、工事業者と建物所有者の双方が適切な対策を講じることが重要です。事前の準備と工事中の継続的な対応により、振動の影響を大幅に軽減できます。法的な規制基準もあるため、これらを理解した上で効果的な対策を実施しましょう。

工事業者が行う対策

信頼できる解体業者は、工事開始前に振動測定器を設置し、リアルタイムで振動レベルをモニタリングします。建設作業振動の規制基準（昼間75デシベル以下）を遵守し、基準値を超えそうな場合は作業方法を調整するなど、細やかな配慮が行き届いているのが優良業者の特徴です

工法面では、振動の少ない圧砕工法の採用や、ブレーカー作業時の衝撃を分散させる工夫を行います。廃材の落下による衝撃を軽減するため、緩衝材を敷いたり小分けにして搬出するなどの配慮も重要です。

また、基礎解体では振動の強い作業を短時間で集中的に行い、影響時間を最小限に抑えるのが基本となります。

作業時間の調整も効果的な対策の一つです。住民の生活時間を考慮し、朝8時以降、夕方6時以前に作業を限定し、昼休み時間には振動の大きい作業を避けるなどの配慮を行います。近隣住民への事前説明と定期的な状況報告も、トラブル予防に重要な役割を果たします。

建物所有者ができる対策

建物所有者は工事開始前に、自宅の状況を詳細に記録しておくことが重要です。既存のひび割れや建具の不具合を写真で撮影し、日付とともに保管しておけば、工事による被害かどうかの判断材料になります。特に外壁、内壁、天井の状況は入念にチェックしましょう。

貴重品や壊れやすい物品は、工事期間中は安全な場所に移動させます。食器棚の中の食器、本棚の本、精密機器などは振動で落下や故障の危険があるため、事前の保護が必要です。また、壁に掛けた絵画や鏡なども一時的に取り外すことをおすすめします。

近隣住民との事前相談も大切な対策の一つです。工事業者と合同で説明会を開催し、工事期間や振動の程度について情報共有することで理解を得られるでしょう。工事中に問題が発生した場合の連絡先を明確にし、迅速な対応体制を整えることも、良好な近隣関係を維持するために重要です。

まとめ｜適切な対策で振動被害を最小限に抑えましょう

解体工事による振動は、重機による解体作業や廃材の搬出が主な原因となります。建物へのひび割れや建具の不具合、生活への騒音・ストレスなど、さまざまな影響が考えられますが、適切な対策により被害を最小限に抑えることが可能です。

工事業者には振動測定・モニタリングの実施、低振動工法の採用、作業時間の配慮を求め、建物所有者は事前の状況記録と貴重品の保護、近隣住民との情報共有を行うことが重要です。工事前の十分な準備と工事中の継続的な対応により、振動による被害を防ぎ、安全で円滑な解体工事を実現できます。

振動が気になる場合は、遠慮なく業者に相談し、適切な対策を講じてもらいましょう。