分別解体とは?工事対象・必要な届出・信頼できる業者選びのコツを解説

解体工事は建物や建築物を取り壊す工事ですが、ただ重機で壊せばよいというわけではありません。実施する際には、解体によって発生した建設資材の廃棄物を種類ごとに分別していく必要があります。この手法を「分別解体」と言います。

2002年に「建設リサイクル法」が施行されて以来、一定の建設工事において分別解体が義務化されました。従来の、解体で出た廃棄物を分別せずに埋め立て処分をおこなう方法に比べて、廃棄物量の減少や資源の有効活用に大きな影響を与えています。

今後、分別解体がさらに進むことで、持続可能な社会を実現するための環境保護につながっていくでしょう。

本記事では、分別解体の概要や対象となる工事、分別解体をおこなう際にやるべきことなどについて解説します。

建設リサイクル法によって義務化された「分別解体」とは

「分別解体」とは、建物や建築物を取り壊す際に発生した建設資材を分別して、計画的に施工する手法です。

従来は「ミンチ解体」と呼ばれる、建物の構造や使われている建材に関係なく、重機を使って一気に建物を壊していく方法が取られていました。解体をおこなううえでの注意点や手順だけ抑えて一気に取り壊すだけでいいので、工期の短さ・費用の安さから主流の工法でした。

しかしミンチ解体では、発生した木材や金属、ガラスなどを分別をしないまま埋め立て処分をおこなっていたため、環境への大きな悪影響が問題となっていたのです。

そのような背景から、環境問題・社会問題への対応が求められるようになり、2002年に「建設リサイクル法」が施行され、一定の工事において分別解体が義務化されました。

分別解体をおこなうことで、廃棄物量の減少・リサイクルの促進につながり、環境への負担が軽減されます。

分別作業や建設資材の運搬作業などが必要なため、ミンチ解体に比べるとコスト・人手作業が増加し、工期も長くなってしまいます。しかし、将来的なトラブルの回避や法令遵守、環境問題への対応を考えれば、確実におこなうべき取り組みといえます。

分別解体の対象工事

建設リサイクル法に基づいて、以下の規模の解体工事をおこなう場合は分別解体が義務付けられています。

引用:建設リサイクル法の 対象となる建設工事では 届出が必要です!|国土交通省

実施する発注者および施工者は、所在地の都道府県に届け出る必要があります。適切な届出をおこなわなかった場合は、法律違反として罰則が科されます。

分別が義務付けられている4つの「特定建設資材」

分別が義務付けられている資材は、「特定建設資材」として定められています。特定建設資材は以下の4つです。

  • ・コンクリート
  • ・コンクリートと鉄から成る建設資材(混合廃棄物)
  • ・木材
  • ・アスファルト・コンクリート

これらを適切に分別・処理することで、リサイクルや資源循環が可能になり、環境負荷の軽減につながります。

分別解体をおこなう際にやるべきこと

分別解体の実施には、適切な手続きや準備が必要となります。ここからは分別解体をおこなう際にやるべきことについて解説します。

都道府県に対して分別解体の計画などを届け出る

分別解体が必要な工事は、所在地の都道府県に対して分別解体の計画について届け出る必要があります。届出は工事に取り掛かる7日前までにおこなわなければいけません。都道府県に対しての届出の際は、主に以下の書類が必要です。

  • ・分別解体の計画書
  • ・工事方法が分かる図面
  • ・現場の場所や周辺の見取図
  • ・設計図や写真

詳細は各自治体によって異なるので、詳しくは自治体のホームページで確認しましょう。

届出の提出義務は施主(発注者)にありますが、委任状を作成して解体工事業者(受注者)に依頼することも可能です。ただし、どちらの場合も最終的な責任は施主にあることを理解しておきましょう。

解体工事完了後の再資源化の結果報告をおこなう

業者に届出をおこなってもらった場合、解体工事完了後の再資源化の結果報告をおこなってもらうようにしましょう。

分別解体にかかる費用の説明や、工事完了後の再資源化の結果報告を、受注者から発注者におこなうことが法律で義務付けられています。

明確に説明・報告を受けることで、業者が問題なく分別解体をおこなったかが把握できます。もし、何か疑問に思う点があれば、届出をした都道府県に確認するようにしましょう。

トラブルを防ぐために施主が注意すべきポイント

分別解体は法律で定められた義務ですが、最終的な責任はすべて施主にあります。そのため施主は、適切な手続きや計画立案が必要となります。

ここからは、トラブルを防ぐために注意すべきポイントを3つ紹介します。

業者に分別解体の有無を確認する

解体工事を業者に依頼する際は、分別解体の有無を確認するようにしてください。

契約書や見積書に「分別解体」の記載があるか確認したり、契約前の打ち合わせの際に直接確認したりしましょう。

契約書に記載がない、見積もりがほかの業者に比べてあまりにも安い場合、違法にミンチ解体をおこなっていたり、不法投棄をしている可能性があります。

トラブル防止のためにも、事前に必ず確認し、信頼できる業者を選びましょう。

業者が届出をしていない場合は施主にも罰則が科される

業者が届出をしていない場合や、特定建設資材を違法な方法で処分した場合は、法律違反として罰則が科されます。この罰則は業者だけでなく、施主も対象なので注意が必要です。

以下は、法律に違反した場合の罰則の一例です。

違反内容罰則
分別解体の届出をおこなわずに工事をした最大20万円の罰金
分別解体への変更命令に従わなかった最大30万円の罰金
分別解体実施義務の実施命令に違反した再資源化等実施義務の実施命令に違反した最大50万円の罰金
解体工事業の登録・更新をおこなっていない1年以下の懲役または最大50万円の罰金
技術管理者の設置をおこなわなかった最大20万円の罰金
報告の徴収や立入検査に応じなかった最大20万円の罰金

参照:建設リサイクル法:建設リサイクル法に違反した場合の罰則

上記は一例です。これら以外にも罰則が細かく分かれているため、内容と合わせて事前に確認しておきましょう。

分別解体の流れやスケジュールなどを業者と打ち合わせておく

分別解体は、現場を任せる業者によって対応に差が出ることがあります。そのため、契約前や工事前の打ち合わせの時点で、分別解体の流れやスケジュールなどを確認しておきましょう。

業者との打ち合わせの際は、「流れやスケジュールを具体的に伝えてくれるか」という点を確認しましょう。具体的に説明できない業者は信頼性に欠けるので注意が必要です。

信頼できる業者であれば、「分別解体」のような記載がある見積もりを出し、具体的な説明や必要となる金額の根拠を明確におこなってくれます。

信頼できる解体工事業者を見極めるポイント

分別解体は専門的な知識や経験が必要となるため、信頼できる業者を選ぶことが重要です。

信頼できる業者を見極めるポイントは多岐にわたりますが、とくに以下のポイントを抑えておくことで安心して工事を任せられる優良業者を見つけることができるでしょう。

  • ・必要な許認可を受けているか
  • ・ホームページは整えているか
  • ・施工実績や口コミが豊富

必要な許認可を受けているか

解体工事をおこなうには、「建設業許可」「解体工事業登録」などの法律で定められた許可や登録が必要です。業者のホームページで確認したり、直接問い合わせて確認したりしましょう。

また、分別解体をおこなう際には、「産業廃棄物収集運搬許可」を取得している必要があります。産業廃棄物収集運搬業許可とは、発生する廃棄物を収集・運搬するために必要な許可のことです。許可なく産業廃棄物の収集運搬をおこなうと「廃棄物処理法違反」となり、罰則が科せられる可能性があります。

トラブルを避けるためにも、必要な許認可を受けているか必ず確認しましょう。

ホームページは整えているか

一般的な会社であればホームページに「会社概要」があり、代表者名、資本金や社員数などの企業規模、所在地などが確認できます。

「施工とは関係ない」と考えるかもしれませんが、ホームページは会社にとって、インターネット上で「自己紹介」ができるパンフレットのようなものであり、信頼を得るためのツールとなっています。

ホームページなどでしっかり会社を公表していることは、顧客に安心感を与えることに努めている信頼度の高い会社だと言えます。

施工実績や口コミが豊富

業者の選定をおこなう際は、施工実績や口コミを確認することも重要です。

解体工事の実績が多いと、さまざまな現場で蓄積された技術や経験を活かして工事をおこなってもらえます。工事実績は業者のホームページに掲載されていることが多いです。

また、実際に解体工事をおこなってもらった人の口コミも確認しましょう。口コミは、ホームページやSNS、Googleマップの口コミなどを参考にすると良いでしょう。ただし、口コミを完璧に鵜呑みにするのではなく、あくまで参考としてチェックするようにしてください。

まとめ

分別解体は義務化されているので実施しなければいけないのは当然ですが、持続可能な社会を実現するための環境保護につながります。各業者が取り組むことで、廃棄物量の減少や資源の有効活用に大きな影響を与えます。

「法律で定められているから実施する」ではなく、現代の環境問題・社会問題へ対応する必要な取り組みとして実施するようにしましょう。

ただし、届出を業者に任せる場合は注意が必要です。最終的な責任はすべて施主なので、正確に分別解体をおこなっているか、届出や実施方法に問題はないかなど、必ず確認するようにしましょう。

解体工事 簡単セルフ見積り